TOP›WILLの卒業生たち›第1回 『日本一』 T・S君
「塾長!日本一になったで!」
私立入試を五日後に控えて直前対策講座を開講している最中のことだった。たまたま空き時間があり、事務所にいた私の前にT君は大声で叫びながら近づいてきた。きょとんとしている私に「日本一、日本一になったんや!!金メダルもろてきたで!」その瞬間、私はT君の大きな身体を思い切り抱きしめていた。
その五日後、難関私立であったS高校を受験し見事合格した。陸上で進学するなら引く手あまたの私立高校があった。それらを振り切り学力で難関校を目指したのである。恐らく常に自分を追い込むことによって力を発揮させてきた、T君らしい行為だったのかもしれない。
中3の二学期以降も、ほとんどの生徒が部活を引退する中で一人部活を続けながら、ほぼ毎日T君は塾へ通い詰めていた。授業の無い日は目標を定めて黙々と自習に励み、日々力をつけていた。T君のことを思い浮かべる度に“スポーツと勉強の両立は中学生に置いては絶対に不可能ではない”と改めて感じる。
今でも時々時間が空いた時に塾を訪ねて来る。二年後のリオデジャネイロはまだ無理かもしれないが、六年後の東京オリンピックへは是非とも出場してほしい。恐らく開催期間中は夏期講習の真っ最中であるだろうが、何を差し置いてもT君の雄姿を瞼に焼き付けたい。その為のスケジュール調整を今から考えているのは、あまりにも早すぎるだろうか。
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