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第3回 子育て通信
子どもは変身を繰り返す生き物です。(小学1年生から3年生まで� �
小学1年生から3年生までに起きやすい問題について触れていきますが、中でも特に大きな問題となる国語の黙読能力の獲得と算数の四則計算の意味の理解の2点に絞って触れていきます。
小学1年生の時に正しい学習方法がとれないと、小学校以降の勉強で大きな問題が起きてきます。成績が悪い子どもたちのほとんどは、小学1年生や2年生の時期の学習に原因があるのです。
小学校に上がる前に、日本人であれば日本語で意思疎通ができるようになっています。人の言うことを理解できますし、自分が言いたいことを言うこともできます。
人は本能的に音声言語を習得する能力を持っているのです。どこの国の子ども達も、自然に自分の国の言葉を話せるようになります。しかし、文字言語となると話は違ってきます。学習を繰りかえす努力無しには、読み書きの能力は身につかないのです。
この時期の国語の勉強で最も大事なことは音読です。人は、音声言語は努力しなくても自然に身につきますが、文字言語を文字のまま理解することはできません。文字言語を文字のまま理解する機能は、人の大脳には備わっていないのです。音声言語は、人間が地球上に登場した時から使われています。いやそれ以前から、周囲の危険を察知したり、仲間とコミュニケーションを取ったりするために音声が使われていますから、動物が地球上に生まれた時から、音声を認識し、音声の意味を理解すると言うことが行われています。
それで、音声言語を習得する能力は大脳の機能として備わっているのです。しかし、多くの人間が文字言語を使うようになったのは百年くらい前からです。文字言語の歴史は古いのですが、一部の人間が使っていただけです。ですから、頭の中には文字言語をそのまま理解する機能は備わっていないのです。
音読を繰り返し、黙読していても頭の中で音が響くように訓練して、初めて文字言語を声に出さずに理解する能力が身に付くのです。私たちは、本を読む時、文字をそのまま理解しているのではなく、黙読をして頭の中で響く音を理解しているのです。黙読の能力は、長い努力の末はじめて手に入れることができる能力なのです。
この能力の獲得には2年くらいかかります。ですから、小学校では、国語の授業で2年生まで音読が繰り返されるのです。また、音読という宿題を出し続けるのです。
この時期に音読の練習が不足すると大変な問題が起こります。黙読能力がつかないので、声に出して読めば意味がわかるけれど、声に出さないと全く内容が理解できないという状態になってしまうのです。読語障害と言われる状態です。
この状態を放置すると、本を読んでも全く頭に入ってきません。算数の文章題の意味も分かりません。小学3年生くらいからは、学校の授業で音読はやらなくなり、黙読で授業が進みます。そうすると授業が分かりにくくなります。テストの時間は声を出せませんから、テストで点がとれるはずもありません。
学習障害児というレッテルを張られた子どもたちのほとんどは学習障害児ではなく、読語障害が原因で学校の勉強が理解できなくなっているのです。
この子どもたちは、音読を繰り返すことで勉強が理解できるようになります。このような子どもたちに、黙読能力をつけるために音読をさせなければならない期間はさまざまですが、長ければ2年かかります。小学1年生や2年生で黙読能力を習得するよりも、はるかに難しくなってきます。
ですから、小学1年生と2年生の期間の音読は、非常に重要なのです。
読語障害が厄介なのは、正常と読語障害の境目がはっきりしていないことです。黙読では全く分からないというレベルから、分かりにくい、大体分かる、良く分かるというように連続的に続いているのです。はっきり言えることは成績が良ければ問題が無いと言うだけです。
成績が芳しくなければ、すべて有る程度の読語障害あると考えた方が良いと思います。
成績が悪い原因が読語障害ではなく、勉強不足という場合もあります。読語障害が原因かどうかは音読をさせて見れば分かります。「できるだけ早く読んでごらん。」と言って国語の教科書を読ませてみてください。文節で切って、話し言葉と同じくらいのスピードで読めればまず心配はいりません。しかし、文節で切れなかったり、読むスピードが遅かったり、文字を読み違いしていたりしたら、確実にある程度の読語障害が有ると考えるべきです。小学生の半数以上が何らかの問題を抱えているようです。
そのような場合は、気が付いたら即座に音読の訓練を開始することです。そして、すらすら読めるようになるまで続けることです。中学生になると恥ずかしがって音読を嫌がるようになりますから、小学生の間に黙読能力を付けるようにしてください。
読語障害を頭が悪いで片づけている場合が非常に多いのですが、頭の良い悪いは生まれつきではなく、学習過程での何らかのつまずきによって差が生まれているだけです。まれに本当の学習障害児がいますが、世間で言われている学習障害児の100分の1もいないと思います。ほとんどは読語障害の重い状態です。小学生で成績が悪い時は、軽い状態の読語障害をまず疑ってみる必要があります。
この問題は、昔に比べて増えてきています。原因は、共稼ぎのご家庭が多くなり、家庭で子どもの音読を聞いてあげられる時間が取れなくて、子どもが家で音読をしないままになっていることも考えられます。学校での音読だけでは十分な黙読能力はつきません。ですから、黙読能力がついているかどうか十分に注意をする必要があります。
前回、小学3年生までは抽象概念が理解できないと書きましたが、これを忘れると小学低学年の学習に大きな問題を引き起こします。特に算数の学習において深刻な事態が生まれます。
算数で数字を使った計算を習いますが、数字は現実のものの個数を抽象化した抽象概念です。ですから、小学3年生までの子どもたちは、そのままでは数字を理解できません。具体的なものをイメージできるように教えないと、理解できないまま計算を覚えてしまいます。人とリンゴは足したり引いたりできません。人とリンゴが文章題に出てきたら、その問題は掛け算か割り算の問題です。リンゴとリンゴだと足し算か引き算の問題です。
しかし、この事さえ分からずに、計算だけはできる子どもたちがいます。計算ができることと計算の意味を理解していることは全く別次元の問題なのです。
足し算を習う時は、足し算の文章題も習います。引き算の時には引き算の文章題、掛け算の時には掛け算の文章題、割り算の時には割り算の文章題を習います。
この時期の文章題でつまずく生徒はほとんどいません。文章題に出てくる数字を、足し算の時には足せばいいからです。引き算を習っている時には引けばいいのです。文章の意味が分かろうが分かるまいが、足し算や引き算の意味が分かろうが分かるまいが、文章題に書いてある数字で足し算を習っている時には足し、引き算を習っている時には引いておけばいいからです。
ところが、小学3年生の終わりになると、四則計算の文章題が混ざって一緒に出てきます。この時、文章題のできる子どもとできない子どもがはっきり分かれます。
できない子どもは、足したら良いのか、引いたら良いのか、掛けたらいいのか、割ったら良いのかまったく分からないのです。今まで、足し算や引き算の意味が分からないまま進んで来てしまったのです。割り算をすべきところを、足し算をしてしまった生徒に、間違っているよと言うと、何も考えずに引き算をします。また間違っているよと言うとすぐに掛け算をしてしまいます。計算の意味が分かっていないので、考えることさえできないのです。
このようにまったく計算の意味が分かっていない子どもが小学3年生の半分近くいるようです。
小学1年生は抽象概念が理解できません。そのような子どもたちに算数を教える時は、常に具体的なものを示しながら算数を教えなければなりません。小学1年生の教科書や問題集には、花や鳥やリンゴなどの絵と共に算数の計算が書かれています。この絵と数字を結び付ける指導法を3年生まで続けることが、算数を理解させるのに不可欠なのです。もっと良いのは、本当のリンゴとかみかんを使って教えることです。
しかし、それはいつまでも続けるには無理が有ります。ですから、本物のかわりに絵が書いてあるのです。現実のものの個数を数字は抽象化したものであること、現実の生活の中で起こることを計算は抽象化しているのだということを、辛抱強く教えていかないと、計算の意味を理解しないままになってしまいます。何のために絵が有るのか、その目的をしっかり理解していないで教えると、足し算や引き算の意味を理解しないまま先に進んでしまうことになるのです。
子どもたちも、しつこいくらいに言わないと、算数を理解しないままでも計算はできますし、テストで○をもらえますから、面倒になって理解しないままになるのです。理解していなくても当面の授業やテストでは問題が起こりません。それで、生徒も保護者も、子どもたちが算数を理解していないことに気づかないままになってしまうのです。それが、3年生の終わりに、いきなり表面化してくるのです。
3年生の終わりに、四則計算の意味が分かっていなかったと分かっても、それから四則計算の意味を理解させるのは非常に難しいのです。子どもたちは今まで文章題でも○をもらってきたのですから、何が起こっているのかまったくわけが分かりません。「なるほど、今まで私は足し算や引き算の意味が分からないまま、ここまで来てしまったのか。」などと考えられる子どもはいません。急に文章題が解けなくなってとまどうばかりなのです。
算数っていったい何なのか、わけが分からなくなってしまうのです。自信喪失と困惑で先生の言うことを聞く余裕もありません。そうしているうちにも学校の勉強はどんどん進みます。
そこで、1年生からの四則計算を勉強しなおしている暇はないのです。学校の先生も教えている暇がありません。こうして算数の落ちこぼれが生まれて来るのです。
この問題に気づいたらすぐに家で具体的なものを使ったり、具体的な生活の中での問題を作ったりして、四則計算の意味を教える必要があります。テスト形式で無く、ものを使ったり、会話形式で生活上のことを問題にしたりしてあげると、意外に早く理解できるようになります。テスト形式だと、今まで○をもらっていたイメージが強く、なかなか納得してくれません。一番いいのは3年生の春休みくらいに集中的に理解させることです。そうすれば、ほとんど問題は無いのですが、4年生になってからでは、4年生で習う問題の理解が難しくなっていますから、問題が大きくなります。
もちろん、最も良い方法は、小学1年生の時から、足し算や引き算の意味を理解しているかどうかを確認しておくことです。しかし、普通の問題集やテストでは理解しているかどうかを判別することは不可能です。
でも、簡単な方法があります。問題を解かせるのではなく、計算式から文章題を作らせるのです。例えば、5+7=12と言う計算があったとしたら、「リンゴが5個入ったかごと7個入ったかごがあります。いっしょにするとなんこになりますか。」とか「5人であそんでいるところへ友達が7人やってきました。合わせて何人になりましたか。」といった問題をたくさんつくらせるのです。これができれば問題無く計算の意味を理解しています。うまくできなかったとしても、このような問題作りを繰り返せば理解できるようになります。もし小学3年生までのお子さんがおられたらすぐにやってみてください。
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