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第23回子育て通信
反抗期の子どもへの接し方
小学高学年を終えて中学生になる時に直面する反抗期の問題について触れていきます。
中学生になると反抗期に入るということは良く知られています。皆さんも自分の体験も含めて、よく知っておられることと思います。しかし、なぜ反抗期になるのか、反抗期は何のためにあるのか、反抗期を通して子ども達はどう変化するのかは意外と知られていません。まずは、反抗期とは何かを確認しておきたいと思います。
早い子どもでは小学6年生くらいから反抗期が始まります。例外はありますが、遅くても中学2年生くらいには反抗期が始まっています。ではなぜ反抗期は始まるのでしょうか。
それは、子どもが大人になるための準備が始まるからです。
ライオンや豹などの動物では、反抗期は無く、その前に親が子どもの自立を促すために、群れから子どもを追い出してしまいます。動物によって形態は異なりますが、親が子どもを追い出してむりやり自立させるのです。
しかし、人間の場合、子育ての期間が長く、精神的に子どもから大人への変化が始まってもまだ子育ては続きます。子育てが続いている中で起きる「子どもから大人への心の変化」が反抗期なのです。「子どもから大人への心の変化」とは何か。それは、子どもが精神的に自立しようとすることです。それまで身も心も親に頼り切っていた子どもが、自分の自我を持ち、自分のことを自分でコントロールしようとし始めることなのです。
それまで、親や学校の先生の考え方をうのみにして生きてきた自分に気づき、自分で自分の考えを作り出そうとして、とりあえず親の言うことを拒絶して、自分だけで考えようとし始めるのです。
ですから、反抗期は成長の過程で必要不可欠のものですし、歓迎すべきものなのです。
しかし、親にしてみれば、戸惑うことばかりですし、腹立たしいことばかりです。今まで、素直に言うことを聞いてくれていた子どもが突然言うことを聞かなくなるのですから。今までの子どもへの接し方では何もかもうまくいかなくなるのですから、どうして良いか分からなくなります。
子どもが、「今から反抗期に入ります。」と言ってくれたら、まだ心の準備もできるのですが、いつから反抗期に入ったのかわからないのです。
後で、あの頃が反抗期だったのだとはわかりますが、わかった時には後の祭りです。しかし、子どもの方はもっと大変なのです。大人は反抗期という言葉を知っていますし、自分も経験していますから、これが反抗期かという解釈もできます。
しかし、子どもたちは自分がなぜこんなに親の言うことを聞きたくなくなったのかはわからないのです。自分の中に起こっている変化の意味がわからないのです。ですから、子どもの方から反抗期をうまく乗り切るための方策を見つけることは不可能です。親が対処法を考えるしかないのです。
反抗期の子どもへの接し方を間違えると大変なことになります。親子の断絶が生じ、それが一生続くことだってあります。そこまでいかなくても、親子関係にひびが入り、修復できなることはよくあることです。というよりそのような親子関係の方が多いのではないでしょうか。
高校生になって親と会話が極端に少ないという場合などは、ほとんどがこの反抗期の接し方に失敗しているのです。高校生で親と口を聞かない子は過半数を占めるでしょう。ですから、高校生はそんなものだと思われがちですが、反抗期をうまく乗り越えた親子はそうはなりません。普通に会話しています。
稀に親子での話合いが普通にできている家庭もあるのです。中学生から知っている家庭だと、中学生の頃の親子関係も知っていますので、円満な親子関係が継続している理由もわかります。そのほとんどが、反抗期をうまく乗り切った家庭なのです。
では、反抗期をうまく乗り切るにはどうしたらいいのでしょうか。それは、まず反抗期に入ったことをいち早く気づくために心の準備をしておくことです。子どもが小学6年生になったら、そろそろ反抗期が始まるかもしれないと考えることです。中学生になったら、さあ反抗期が始まるぞと待ち構えることです。
そして、子どもの様子がおかしくなったら、さあおいでなすったと覚悟を決めることです。反抗期が来たことに気づかないで、今までどおりにいかないと思っていらいらすることが最も危険なのです。そのような状態が長引くと親子の信頼関係に大きな亀裂を残すことになります。反抗期にいち早く気づくこと、これが最も大切なことです。
反抗期に入ったと思ったら、今まで子ども扱いをしてきた子育ての手法を改め、大人として接し始めることです。子どもは子ども扱いされることを嫌うようになっていますから、大人として接してあげれば、反抗期に入っても親子関係はうまくいきます。しかし、反抗期にいつからはいったのかは、親から見ても子どもから見てもはっきりしないのです。少しずつ反抗期に入るといった方が良いでしょう。反抗期とは、子どもの心の変化ですから、当然ながら心は徐々に変化していくのです。ですから、いつから大人扱いをするのかというのは、判断が難しいのです。でも中学生になる頃にはその変化は始まっていると考えて良いと思います。
ですから、一番良い方法は先手を打つことです。反抗期に入る前に、大人扱いを始めるのです。
それに最も良いタイミングが、中学入学です。入学式の日に「中学生になったのだから、これからは自分のことは自分で考えて決めなさい。お母さんはいちいち口出しをしませんからね。これからは、大人としての自覚と責任を持って行動しなさい。でも、相談がある時はいつでも言ってきてね。助けがいる時は、いつでも助けてあげますからね。」というような先手を打つのです。
子どもも、中学生になると言う緊張感と不安と期待がないまぜになったような心境ですが、こらからは小学生の時のようにはいかないことはわかっています。この中学入学を機に、親子の接し方を変えておくことが最もうまく行く方法だと思います。
大人として接すると言うことは、具体的にどういうことでしょうか。大人として接するといっても、反抗期は大人になるための準備をしている段階で、大人になっているわけではありません。自分で自分の考えを作りたいと思っていても、そう簡単に自分の考えを作れるものではありません。ですから、親から見たら頼りなくて見ていられないのです。親の言うことを聞かないだけで、まだ自分の考えもはっきりしていないのですから、その行動は不安定です。ですから、親の立場としてはあれこれ言いたいことが生まれてくるのです。
しかし、それでも子どもの判断に任せて見守る必要があるのです。確かに、失敗する危険性も高いのですが、失敗から学ぶことも大事なのです。自分の考えを作るには、自分の考えで行動し、失敗から学ぶしかないのです。人は、失敗しないで成長することはできません。失敗から学ぶ以外に、自分の考えを作る方法は無いのです。
もし、親の言うとおりに行動し、失敗しないで中学時代を過ごせたとしたらどうでしょうか。
結果としては、中学時代を無事に過ごせて良さそうですが、しかし、自分で判断する力は育ちません。子育てで大事なことは、無難に子供時代を過ごさせることではありません。親の力に頼らずに生きて行く力を育てることなのです。ですから、失敗から学ばせると言うことは非常に重要なのです。失敗するとわかっていても敢えてやらせてみると言うことが大事なのです。もちろん取り返しのつかない失敗はその限りではありませんが。
つまり大人として接すると言うのは、あえて失敗するとわかっていても、子どもの判断に任せてみるということなのです。
しかし、しっかりと見守っていてあげることは大切です。取り返しのつかない失敗になる危険性がある時には、止めてあげないといけないからです。
また、失敗した後にもケアが必要です。失敗から学ぶのではなく、失敗を心の傷にしてしまうこともあるからです。
例えば、クラブ活動の選択で、野球が好きだったから野球部に入ったけれど、練習がきつすぎて練習についていけずに辞めてしまったとします。それで、自信を無くしてしまうのでは、部活選択の失敗が単なるマイナスになってしまいます。そういう時は、テニス部とかサッカー部とか他の体育系クラブ活動を進めて下さい。野球部でついていけなくても他のクラブ活動ではついていける可能性があります。
もっというと、その可能性は非常に高いのです。というのは、中学1年生の1学期の体力は、小学生の時とさして変わりませんが、中学生になると体力の成長は非常に速くなります。1学期についていけなくても、2学期になればついていける可能性は高いのです。中学1年生の初めに、中学3年生と同じ練習をすることは大変なことです。中学1年生の1学期と中学3年生の1学期の体力は大きな差があるのですが、クラブ活動ではそういう考慮はされず、同じ練習をさせるのです。その上、後かたづけとかを1年生に強制するということも起こり、ますますついていけなくなります。
練習についていけず部活を辞めてしまったという想定で話しましたが、まだ辞めていないのであれば、2学期まで辛抱すると体力がついて練習がきつくなくなるよと教えてあげて、もうひと頑張りさせることも良いと思います。
そのような成長の差を考慮に入れてものを考えることは子どもにはできませんが、大人であれば考えられると思います。子どもがやりたいことをやり遂げるためのサポートはやってあげるべきですし、反抗期といえどもそれに反抗することはありません。
もちろん、言い方にもよります。「自分で選んだのだから弱音を吐かない。野球部に入ったら最後まで頑張りなさい。」と言ってはなりません。
このような言葉が、親子関係にひびを入れるのです。そんなことは、子どもはわかっています。それでも、続けきれないくらいにきついのです。ですから、子どもが納得して、もう少し続けてみようと思うような言葉かけが必要なのです。指示命令ではなく、サポートが必要なのです。
反抗期には、大人の言うことを聞かなくなりますが、大人でもその影響力によって反抗の度合いは違ってきます。両親よりも学校の先生への反抗は弱くなります。学校の先生より塾の先生の方が弱くなります。それ以外の大人にはほとんど反抗的な態度は取りません。
つまり、反抗の程度は、自分への影響力に比例するのです。裏返せば、自分が頼りにしている大人ほど反抗的な態度を見せるのです。ですから、自分の言うことを聞かせたいのなら、学校の先生や塾の先生から言ってもらう方がうまく行きます。叔父さんや叔母さんから言ってもらうと言うのも一つの手です。
では、この時代、子どもたちは誰の言うことを最も聞くのかと言うと、同学年の友達や先輩です。特に先輩の言葉の影響力は絶大です。ですから、反抗期の時期に、どのような友達を持つのかはその子の人生を左右するほど重大なことなのです。しかし、子どもの友達を選んであげることはできません。そこで頼りになるのがクラブ活動です。特に、体育系のクラブ活動は先輩後輩の縦系列の影響力が強く、子どもの成長にとっては非常に良い効果があります。クラブ活動は、団体活動で、人間関係も大切です。強くなるための努力も必要です。社会で生きていくために必要な能力を育てるには最も役立つ組織だと思います。中学生の時期は、体が急成長し、一生の体の基本が固まる時期でもあります。ですから、この時期に体育系のクラブ活動をしたかどうかは、人生を大きく左右するのです。その意味でも、体育系のクラブ活動をさせることは有効だと思います。
お勧めは、反抗期の子どもには、クラブ活動を通していろいろな体験と学習をさせ、自ら学び、自ら成長させると言うのが最も良い子どもへの接し方だと思います。
ライオンは子どもを崖から突き落とし、這い上がって来た子だけを育てるという言葉があります。子育ての極意を示した言葉だと思います。
ライオンは、子どもを崖から突き落としたりはしません。ですから、この言葉は、人間の子育ての為に作られた言葉だと思います。
それくらいの覚悟が、反抗期の子どもを育てる時は必要だということだと思います。もっとも、親が崖から突き落とすのではなく、子どもが崖から飛び降りるのをはらはらしながら見守っていなければならないのですが。
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