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第22回 子育て通信
学ぶ意欲を育てる方法��
今回は、夢や目標を持たせることで学ぶ意欲を育てる方法について触れていきたいと思います。夢や目標というと小学生には難しいと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、小学生の方が、壮大な夢や目標を持てるのです。
中学生や高校生よりも現実認識が弱い分だけ夢も大きくなります。夢実現までの期間が長い分だけ夢を持ちやすくなるのです。
夢といっても医者になりたいとか宇宙飛行士になりたいとかの壮大な夢でなくてもかまいません。花屋さんになりたいとか看護婦さんになりたいとか学校の先生になりたいと言った身近な夢でも良いのです。
子どもたちはどのようにして夢を持つのかというと、何かの機会に知った、何かの機会に触れた人に憧れて夢を持ちます。小学1年生でも大きくなったらどんな人になりたいのと聞くと、「花屋さん」とか「学校の先生」とか「お菓子屋さん」といった言葉がポンポン出てきます。もっとも、翌日にもう一度聞いてみると別の答えになっているかもしれませんが、それでもいいのです。
自分の将来を考えることで、今の勉強は将来自分が成りたい人になるために役に立つのだという自覚が生まれれば、勉強に対する目的意識が芽生えます。目的意識とまではいかなくても、勉強は自分のために役立つものだという自覚が生まれます。
同じような目的で、「勉強しないと、将来偉い人にはなれないよ。」とか「勉強しないと大人になって苦労するよ。」と言う人は多いのですが、これは否定系の語り口で、子どもに恐怖心を植え付けることがあっても、勉強したいと言う意欲を生みだすことはありません。勉強しなければならないと思わせることはできても、勉強を好きにさせることはできないのです。
人に何かをさせようとすれば、肯定系の語り口でなければなりません。同じ内容でも「勉強すれば、きっと将来偉い人になれるよ。」とか「勉強すれば大人になって幸せになれるよ。」と言う肯定的な表現が必要です。同じことを言っているようですが、子どもたちにとっては、脅迫か励ましかの違いがあります。脅迫は嫌いで、励ましは好きですから、勉強も話し方次第で、嫌いになったり、好きになったりしてしまうのです。
しかし、このような話よりも、どんな人になりたいかを考えさせる方がずっと具体的にイメージしやすく、意欲を高める効果があります。ほっといても、いろいろな経験や情報から、自分が将来なりたい人は生まれてきますが、最も効果的なことは偉人伝などを読ませることです。
私の子どもの時代には、シュバイツアーとか野口英世と言ったアフリカで活躍した医者の話などが多かったのですが、今は多種多様な偉人伝があります。コンピューター関係の会社を興した人や野球選手なども多いかもしれません。その中から、お子さんが好きな伝記を選ばせて読ませることです。
野球選手の伝記を読ませたら、野球ばっかりやって、かえって勉強しなくなるのではと思われるかもしれませんが、どのような伝記でもすごく頑張ったという点は共通しています。野球が好きなお子さんなら、野球選手の話なら楽しんで読めるでしょうし、その中から頑張ることの大切さは伝わると思います。興味のない話からは、人は影響を受けないものです。興味のある世界からは、影響を受けるはずです。勉強しないで、野球ばっかりやっているお子さんがいたとしたら、野球から目をそらして勉強に目を向けさせるのではなく、野球を通して努力の大切さをわからせ、野球に対する努力だけでなく、何事にも努力が大切だとわからせる方が効果的なのです。
中学生の話になりますが、体育系のクラブ活動で頑張っている子は、高校受験が近づくと、受験勉強も頑張ります。中学3年生の後半でぐんぐん成績を上げてくるのは、クラブ活動を頑張っていた子どもたちなのです。小学生でも、算数がわからなかったり、漢字が覚え切れなかったりした時には、頑張れるようになるはずです。
牛が歩いている方向と逆の方向に牛を動かしたければ、牛を前に引っ張りながら、円を描くようにして、向きを変えて行く必要があります。牛を後ろ向きに引っ張っても抵抗して、後ろには動きません。人も同じです。前へ、前へと引っ張って方向転換をさせることです。
とはいえ、伝記を一冊だけ読ませるというわけではありませんから、そのうち勉強の大切さがわかる伝記にも出会えます。まずは、お子さんが好きなジャンルから読ませ始めて下さいということです。これも、牛といっしょです。好きなものを読ませながら次第に方向を変えるのです。
小学高学年という年頃は、大人に興味を持つ年頃です。大人の世界に興味を持つ年頃です。ですから、伝記は意外に読んでくれます。伝記を読ませるにはうってつけの年頃ですし、この年齢以上に伝記から強く影響を受ける年齢はありません。読書は、国語力を付け、考える力を付ける上でも効果的な手法です。ぜひ、伝記を読ませてみてください。
その時に注意することは、お子さんが読みたいと思う伝記を選ばせることです。何気なく本屋さんに連れて行って、何気なく伝記のコーナーを探し、「野球好きだったよね。野球選手の本が有るけど買ってあげようか。」といった風に、さりげなく読ませ始めることです。そして、次第にいろいろな伝記を読ませるのです。最初から、皆さんの読ませたいものを読ませようとしないことです。一冊目が面白くないと次から読ませられなくなります。
一冊目が気に入ると、同じ伝記というだけでいろいろな伝記を読んでもらえます。
夢、目標と言う言葉を使ってきましたが、それは大人になってどんな人になりたいかというような遠い将来の夢や目標でなくてもかまいません。算数で九〇点取りたいでも、クラスで一番になりたいといった近い将来の夢でもかまいません。友達の何々さんよりも良い点が取りたいでもいいのです。お子さんがどうなりたいかを考えて、浮かんでくる答えなら何でもいいのです。
気を付けなければならないのは、「友達の何々さんに負けないで。」といった皆さんの要望であってはいけないということです。これは、「勉強しなさい。」という強制と同じです。逆効果です。お子さんは、お子さんのありたい姿のためなら頑張れますが、強制が働くとやったとしても勉強が嫌いになってしまいます。学ぶ意欲は低下するのです。
中学生になると、「将来こんな人になりたい。だから、高校はどこに行って、大学はどこの何学部に入りたい。だから、次の定期テストでは何点取りたい。」というふうに、時間軸に従った考え方ができるようになります。しかし、小学生の間は、そんなに整然とは考えられません。ですから、遠い将来の夢と近い将来の夢が混在していても良いし、片方だけでも良いのです。
小学生の高学年になると、自然に憧れの人はできてきます。プロのスポーツ選手だったり、宇宙飛行士という憧れの職業だったり、隣のお兄さんだったり、お父さんさんだったり、いろいろなきっかけで、いろいろな種類の憧れる人は生まれてくるものです。深く考えなくても、なんとなくかっこ良いとかでもかまわないのです。
その、お子さんの前向きな気持ちを自覚させることで、おのずと勉強にも前向きに取り組んでくれるのです。その憧れと、勉強との整合性が取れなくてもよいのです。前向きな気持ちを引き出すことで、何事にも前向きになるのです。ですから、野球選手が憧れでも勉強をするようになるのです。
中学受験をする小学生を見ると、一日に四時間から五時間も勉強している姿です。昔は、中学受験も今ほどは難しくありませんでした。ですから、一日平均一時間か二時間くらいしか勉強していませんでした。それでも、中学受験には合格したのですが、今の時代はそんな勉強では到底合格できません。ですから、学習塾の宿題は膨大で、小学六年生にもなれば四時間から五時間の勉強時間が必要になるのです。では、中学受験生はなぜそんなに勉強できるのでしょうか。それも、楽しそうに。
みんながみんな、楽しそうに勉強しているわけではありませんが、成績の良い子ほど楽しそうに勉強しています。楽しそうでない子は、成績は上がりません。
中学受験で楽しそうに勉強している子どもたちを見ることで、小学生の学ぶ意欲を育てるコツが見えてくるのではないでしょうか。
実際に、出会った楽しそうに長時間勉強している子どもたちに共通していたことは、志望している中学校への憧れが強かったことです。
もちろん、その憧れが自然に生まれた訳ではありません。お父さんやお母さんが中学受験をさせたいと思い、志望校の私立中学校に連れて行き、校舎を見せたり、制服を見せたりして憧れを育てていったのです。近くに志望校の私立中学生がいたら、その人に話をしてもらい、その私立中学生みたいになりたいと言う憧れを育てるという場合もあります。その中学からはこんな偉い人が出ているとかその中学の卒業生には医者が多いと言った話をして、志望校の私立中学に対する憧れを育てて行くという方法もあります。この憧れの強さと学ぶ意欲が比例し、学ぶ意欲と成績が比例していたのです。
塾ですから、同じクラスの子どもたちには同じ量の宿題が出ます。ですから、みんな似たような勉強時間になります。しかし、成績は勉強時間とは比例しません。学ぶ意欲と比例するのです。ですから、中学受験で成績を決めるのは、志望校への憧れの強さなのです。そして、それは塾よりも子どもたちの保護者が子どもに憧れを持たせられたかどうかによって決まってくるのです。クラス指導ですから、塾の先生は、当然全ての子どもに同じ内容を教えています。ですから、教え方でもないのです。子どもの頭の良し悪しではないかといわれるかもしれません。しかし、そのことは直接に図ることはできませんし、もともと頭の良し悪しは今までどれだけ前向きに勉強したかで決まるものです。確かに学歴の高い保護者の子どもは、成績が良いという傾向はあります。しかし、それも遺伝というよりは、その保護者がなぜ子どもの時に自分が勉強したのかを思い出して、子どもに同じようにしているだけです。遺伝というよりも、子育て方法の世襲といった方が良いと思います。つまり、今まで話してきた夢や目標を持たせることで学ぶ意欲を育てているのです。
もう一つ中学受験で成績の良い生徒に共通していることは、医者になりたいとか宇宙飛行士になりたいといった将来の夢を持っているということです。しかし、これは、志望校への憧れほどは強い影響力を持っているわけではありません。というのは、成績が良い子でも将来の夢は漠然としているという子どももいるからです。子どもたちは、将来の夢よりも志望校の生徒になることの方が、当面ずっと強い夢なのです。それでも、将来の夢を持っている子どもたちの割合は、成績の良い子ほど大きくなります。
もう一つの大きな要因は、中学受験塾で回りの子どもたちも長時間勉強しているという環境があります。自分だけ長時間勉強するのは大変ですが、みんなが長時間勉強しているとそれが当たり前に思えて、長時間の勉強が苦にならなくなるのです。そして、友達同士成績を競い合って勉強するのです。環境という要因は大きな要素です。塾に通わずに、自分だけ長時間勉強することは不可能だと思います。ですから、中学受験をさせるつもりが無くても、学習塾に入れて自然と勉強するようにするのも一つの方法だと思います。
中学受験では、保護者が意図的に私立中学への憧れを育てなければ、自然に私立中学への憧れが育つということはありません。しかし、中学受験以外の憧れなら自然に育っています。これを強化し、これを活用して学ぶ意欲を育てることです。中学受験では四時間も五時間も勉強する原動力になっているのですから、小学校の勉強を前向きに取り組ませるエネルギーは、必ず引き出せると思います。
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