TOP›ほのちゃんRoomこちら›忘れられない城の歌のイラストよ!
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ムギ創作物語のペンネームHさん・愛称ほのちゃん
PCでイラストをデザインしました。
日々、進化していく!ほのちゃんにはビックリです。
素敵なイラストと物語をお楽しみ下さい。
テーマ:吟遊詩人(ぎんゆうしじん)
創作物語題名:忘れられない城の歌
描写絵(手描き):安藤
吟遊詩人とは、中世においてヨーロッパで各地の宮廷を訪れて、作った詩曲を歌う人
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吟遊詩人をテーマにした創作物語
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忘れられない城の歌1
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吟遊詩人をテーマにした
「忘れられない城の歌」
それはいつだったのかも、
どこだったのかもわからない、
夢か現実かすらもわからない、
小さくて静かな物語。
霧がかった深い森の中を
ひとりの吟遊詩人が
さまようような足取りで
歩いていた。
彼の名はウィルダ。
その腕には
古びたリュート(弦楽器)が
抱えられ、
大きすぎる帽子が
彼の顔を隠していた。
だが、もう誰も彼の歌に
耳を傾けはしない。
時代は、孤独な吟遊詩人達を
取り残して流れてゆく。
どこからか吹いてきた冷たい風に、
ウィルダの抱えていた
リュートの弦(げん)が、
音を立てて弾けて切れた。
大きな荷物を背負った彼は
何も言わずにひたすら
森を歩み進めていった。
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忘れられない城の歌2
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霧がかった深い森の奥に、
古い城が立っていた。
遥か昔は沢山の宴で
賑わったその城には、
もう誰も訪れない。
そして、墓場のような
重い静けさが流れる城の窓辺に、
黒い影が佇んでいた。
だが、そこに人はいない。
けれど、どこかぼやけて
床ににじむその影は、
長いドレスを
まとっているかのように見えた。
黒い影は部屋を振り返るものの、
もう朽ち果てた王座(おうざ)には
誰も座っていない。
まるで姫が恋人を待ち続けるように、
黒い影は再び窓の向こうを
見つめ続ける。
そこに広がるのはただの深い森……
でも、その中を
誰かが歩いてきていた。
一方、ウィルダは
目の前に姿を表した古城に
息を飲んだ。
そして、窓辺にいる
「誰か」とふと
目が合ったような気がして、
引き寄せられるように
城へと近づいた。
そして、古いながらも
しっかりと形をとどめている
城門をくぐって城に入ると、
周りの空気が一気に
冷えたように感じられた。
でも、それは不思議と
自分が抱える悲しみに
よく似ていて、
気がつけば彼は大広間へと
入っていた。
辺りを見渡せば、
壁には細かい彫刻が掘られていて、
色あせた絵画なども飾ってある。
目を閉じれば、
この城に住んでいた
人の心が伝わってくるようだった。
その時、ふと後ろに気配を感じた
ウィルダは振り返った。
翻った長いマントの影が
よぎったものの、
当然そこには誰もいない。
だが、吟遊詩人は
帽子の下で口元をふっと緩めた。
そして、彼は
リュートを取り出すと
そっと歌い始めた。
まるでこの忘れ去られた城に
その歌を捧げるように。
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忘れられない城の歌3
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黒い影は、何もせずに
その歌に聞き入った。
弦が一本足りないリュートで
奏でる旋律(せんりつ)は、
どこか不気味でありながらも
抑えきれない悲しみが
こもっていた。
そして、それと調和する
ウィルダの声はとても優しくて、
様々な感情が込められた
その歌を聞いたら
自然と人々の目から
涙が零れたことだろう……
たとえそれが人ではなくても、
きっと。
ウィルダの歌は城中に
響き渡ってゆく。
そして、その歌に耳
を澄ますかのように、
城の空気は優しく流れていた。
自分の歌を、
聞いてくれている人がいる。
それは、今のウィルダには
とても幸せなことだった。
(ずっと、このままでいたい……)
そう思ったのは
きっと彼だけではない。
力が抜けたように
天井から舞い落ちてきた埃も、
夕陽にきらめきながら
大広間に降り注いでいった。
やがて日は沈み、
いつしかウィルダと古城は
深い夢の中へと
眠りに落ちていった。
その夢の中は、
人々の笑い声が
辺りに響いていた
あの日のままだった。
ずっと戻りたかったこの場所で、
まとった赤いドレスのすそが
翻(ひるがえ)る。
軽やかにダンスのステップを
踏む自分がいる。
あの頃の、あの町は
リュートが奏でる
楽し気な音楽が響いていた。
それに乗せられた
ウィルダの歌を聞いた人々が、
大きな拍手と歓声を上げる。
その中心で、
ウィルダは笑顔で一礼する……
それは、
一瞬の夢だったのだろうか。
歓声はいつの間にか消えていた。
空っぽに聞こえる
リュートの音楽だけが
日陰の隅にむなしく響く。
人々は自分には目もくれず
通り過ぎてゆく……
もう、やめよう。
そう思ったのはついこの間の
出来事だったような気がする。
ならば、やり直せるだろうか。
ふと、ウィルダは思った。
辺りは夢のような霧に
覆われてゆく。
夜が明ける。
遠くで朝の訪れを告げる鳥が鳴く。
昨日と何一つ変わらない
城の大広間がそこにはある。
けれど、そこに漂う空気は
少しだけ温かくなったように
感じられた。
ウィルダはそっと立ち上がった。
(もう一度、歌いたい)
きっと自分が生きている限りは、
あの夢のような瞬間が
再び訪れるかもしれない。
わずかな、輝く希望の光を
胸にともして、
ウィルダは大広間を出ていく。
ひとつの影がそれを追いかけた。
もう行ってしまうの、と。
それが伝わったのか、
彼は黒い影を振り返り、
ゆっくりと頷いた。
黒い影が
何も出来ずにいるうちに、
彼は帽子を取って
城に一礼したあと、
城門をくぐり
再び森へと歩いていった。
(待って)
そう叫べたら
どれほどよかっただろう。
黒い影の心の叫びは、
もう再び歩き始めた
ウィルダには届かない。
けれど昇ったばかりの太陽の中を
歌いながら歩いてゆく
彼の幸せそうな背中を見送りながら、
光の中で薄れていく黒い影は思った。
いや、これでいいのかもしれない。
古い城なんかは
いずれ忘れ去られる運命なのだから。
けれど、彼は違う気がした。
きっと、
あの吟遊詩人ウィルダの歌は
これから人々の心に
残ってゆくのだろう。
そしてもしかしたら、
彼は歌に乗せて
この城のことを
歌うかもしれない。
その時はきっと、
再び沢山の人々が
この城を訪れてくれることだろう。
ウィルダの歌声は
だんだんと遠ざかってゆき、
やがて朝日の向こうに
消えていった。
その後のウィルダの行方は
わからない。
そして、黒い影の行方も
また誰も知らない。
ただ、森の中に佇むその古城は、
今も沢山の人が訪れている。
そう、あの有名な歌に出てくる城として。
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